Marmosetは2026年8月12日、リアルタイムレンダリング・ベイク・テクスチャリングツール「Marmoset Toolbag」のアップデート版5.03を公開しました。テキストレイヤーやスキャッターレイヤーの追加、IESライトプロファイル対応、ベイクのカーバチャ改善など、テクスチャ・レンダリング・ベイクの各系統に手が入っています。
Toolbag 5のトライアル版・サブスクリプション・v5買い切りライセンスのいずれのユーザーも無償で利用できるアップデートです。
テクスチャリング:文字入れとバラまきがレイヤーとして使えるように
テクスチャ系ではレイヤーの種類が増えました。テキストレイヤーは、ブランド名やラベル、技術的な刻印などの文字をテクスチャプロジェクトに入れるためのものです。レイヤーウィンドウのVectorドロップダウンから「3D Text」または「Decal Text」として追加できます。
フォントのスタイル・字間・整列を調整する設定が用意されており、3Dモードではメッシュ表面に沿わせ、Decalモードでは投影で乗せられます。既存のベクターレイヤーツールで作った曲線パスに沿って文字を回り込ませることも可能です。文字のスタイルとマテリアル設定はレイヤー単位で共有するか、要素ごとに個別指定するかを選べます。プロファイルを使えば浮き彫り・刻印の効果も作れるため、武器やプロップなどのハードサーフェス向きだと説明されています。インストール済みのシステムフォントは自動で読み込まれます。
もうひとつの新レイヤーがスキャッターレイヤーで、メッシュ表面にランダムな要素をばらまくものです。石やコケの断片、ゴミなどを散らしてテクスチャに変化とリアリティを足す用途が挙げられています。
散らす要素はブラシシステムを利用するため、ライブラリのブラシプリセットを読み込むことも、自作することもできます。タイルシートを含むブラシ機能の大半に対応しており、配置はランダムまたはグリッド、投影は2D・3D・デカール平面から選択します。スキャッターレイヤーには新しいVisibilityマスクスタックがあり、これは各スキャッター点を「描く/描かない」の二値で制御するマスクとして働きます。フェードさせたい場合は従来のソフトブレンドのマスクスタックも追加できます。
目立たない変更ですが、レイヤーキャッシングも入りました。レイヤーをまとめて結果を裏側に保持することで、編集中のレンダリング負荷を下げる仕組みで、公式は平均で約2.7倍の性能向上としています。これに伴い、5.03からは従来のPreview ResolutionとFast Qualityモードが廃止されました(レイヤーキャッシングにより不要になったため)。
UDIMや複数テクスチャセットを扱う場合は、タイルの一時停止ができるようになりました。特定の領域に集中でき、高解像度タイルが多いプロジェクトでは負荷も下げられます。加えて、ベクターレイヤーがSVGの読み込みに対応。クリップボード経由でも扱えるので、Adobe Illustratorなど外部のベクターソフトからのコピー&ペーストが可能です。
レンダリング:実在の照明器具のデータと、実世界の単位で光を置く
ライティング系の追加が中心です。IESライトプロファイル(.ies)の読み込みに対応し、実在する照明器具の配光データにもとづいて明るさ・減衰・形状を再現できるようになりました。OmniライトとSpotライトで使え、ビーム角はProfile Width設定で調整します。ライブラリのObjects > Light Profilesに新しいIESプロファイルが追加されているほか、自前のファイルも読み込めます。
あわせて物理ライト単位のモードが追加されました。Omni・Spotライトはルーメン、Directional・Skyライトはルクスで明るさを指定します。Brightnessスライダー隣の電球アイコンで有効にするEnergy Conservationモードは、スポット角の調整時やIESプロファイルの切り替え時に明るさを一定に保つものです。Skyプリセットにも明るさを維持するオプションが付きました。
レンダーウィンドウにはグローバルな露出コントロールが追加され、シーン内の全カメラの露出をまとめて調整できます。カメラプロパティとレンダーウィンドウの露出設定は、実機のカメラの露出補正に近いF値スケールの表記になりました。
アニメーション周りではモーションブラーのビューポートプレビューが可能になりました。タイムラインウィンドウのMotion Blur Previewボタンで有効化すると、シャッタースピードとサンプル数の詰め作業をビューポート上で確認しながら進められます(カメラオブジェクト側でもMotion Blurを有効にしておく必要があります)。
プロシージャルスカイにもTint、Sun Scale、Sky Colorといった項目とカスタムBackdropのサポートが加わりました。Skyオブジェクトの Source を Procedural に切り替えると出てきます。
ベイク:カーバチャのアーティファクトが減り、レイの飛びすぎも止められる
ベイクは2点です。まずカーバチャの改善で、より正確になりアーティファクトが減りました。ローポリメッシュの面が出てしまう現象(ファセット)は見えなくなり、UVシーム付近もいくらか改善しているとのことです。


ただし公式は「新しいカーバチャ手法は見た目の傾向がやや異なり、シーンによって差が出る」と注意しています。既存シーンをベイクし直す場合は、カーバチャオプションのStrength設定を調整する必要があるかもしれません。
もう1点がケージの距離制限です。ベイク時のレイの最大距離を指定できるようになり、ハイポリ側に穴が開いている場合に、レイが突き抜けて近くの別の面を拾ってしまう事故を防げます。
シーン・UI:SpaceMouseでの視点操作と、マテリアルの一括編集
3DconnexionのSpaceMouseによるビューポート操作に本格対応しました。6自由度でカメラを精密に動かせるため、通常のマウスでは作りにくいアングルを探る用途が挙げられています。
もうひとつ、マテリアルの複数選択と一括編集が可能になりました。シェーディングモデルの設定や、マテリアル値を揃える作業をまとめて処理できます。
価格・入手先
5.03自体はToolbag 5ユーザーなら無償のアップデートです。新規に購入する場合の価格は以下のとおりで、いずれもUSD表記。30日間のフル機能トライアルも用意されています。
- ✓ 個人向けサブスクリプション: 月額18.99ドル(年間更新で12%割引・アップグレード込み)
- ✓ 個人向け買い切り: 399ドル(アップデートは5.x系のみ)
- ✓ スタジオ向けサブスクリプション: 1シートあたり月額49.99ドル(年間契約で11%割引)
- ✓ スタジオ向け買い切り: 1シートあたり1,299ドル(アップデートは5.x系のみ)
- ✓ アカデミック年間サブスクリプション: 1シートあたり年額119.99ドル(非商用)
個人向けの買い切りとサブスクリプションはいずれも「ホビイスト・フリーランス・学生」向けのシングルユーザーライセンス、スタジオ版は商用ライセンスでユーザー管理ツールが利用可能、という区分です。
管理人のひとこと
レイヤーキャッシングの約2.7倍が、いちばん日常の作業時間を縮めてくれる変更だと思います。テクスチャは詰めるほどレイヤーが増えて重くなる一方なので、Preview ResolutionとFast Qualityを廃止できるほど速くなったのなら、解像度を落としたプレビューで判断して後から気づく、という手戻りが減るはずです。
ベイク側ではケージの距離制限のほうが助かる気がしました。ハイポリに穴が開いているケースは、こちらの作り方が悪いというより分割の都合でそうなることが多く、これまではケージを手で押し込んで回避していた部分です。カーバチャは見た目の傾向が変わるとのことなので、既存プロジェクトを触るときは焼き直しの前にStrengthの確認からになりそうです。
全機能とバグ修正の一覧は公式のリリース記事で公開されています。



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