アバター衣装ハッカソンのスライド|体型に合わせた原型から服を起こし、型紙の形でリトポ

第2回デジタルアパレルデザインコンテストの制作の流れの例。デザイナー・パタンナー、モデリスト、3Dモデラー、VRChatクリエイターの4工程 CG全般

牛山氏(@naoki_ushiyama)が2026年10月5日、ハッカソン形式の「第2回デジタルアパレルデザインコンテスト」で自身のチーム「Team H(Holo Node)」が発表したスライドをCanvaで公開しました。全21ページで、アバターの体型に合わせた「原型」を作るところから、型紙の形のままのリトポロジー、Unityでの揺れものとデータ容量、VRChatでの撮影までを順に解説しています。

アパレル・ゲーム・VRの人が組んで衣装を作るハッカソン

デジタルアパレルデザインコンテストは、壽屋が企画・運営するハッカソンです。アパレル・ゲーム・VRの分野から集まった参加者がチームを組み、課題のアバターに着せるバーチャル衣装を作ります。今回の想定ワークフローは、パターンの作図、CLOでのシミュレーション、3Dモデリングとリトポロジー、Unityでの組み込み、VRChatでの実装という流れで、成果発表会は9月26日にTSUNAGU BASE(KDDI高輪本社ビル)で開かれました。テーマは3Dデータの「バトンタッチ」です。

Team Hは6人のチームで、牛山氏がCGデザイナーとして進行管理とBlender・Unityのワークフローを担当し、ほかはCLOの講師、VRChatter、服飾学生3人という顔ぶれです。チーム名とテーマは、課題アバター「旅枕ヨカ」の名前から連想した「MISSION: RELAY」で、工程を次へ渡す章立てがそのままスライドの構成になっています。

アバター専用の「原型」を作る理由

服の型紙を引くときは、原型(スローパー)という基準の型紙に操作を加えて作図していきます。原型の作り方は服飾の学校で一度は習うもので、バスト・ウエスト・ヒップと背丈が分かれば形はほぼ決まります。ただ、この手順は人間が着る服のためのもので、そのまま引いてもアバターの体型には合わない、というのがスライドの出発点です。

そこでチームは、センターフロント・バストライン・ショルダーポイントなどの基準点が、平面の状態と着せた状態で一致するかを確かめながら、旅枕ヨカ専用の原型を作りました。目指したのはボックスシルエットのストレートな原型で、学生にもなじみのある使い方ができるよう文化式原型に寄せています。背丈と肩幅は1/5サイズのアバターフィギュアを採寸して決め、紙に原寸で作図したものをスキャンしてCLOでなぞり、デジタル化しました。

最初の原型はシミュレーションでゆとりが多すぎ、バストダーツの分量が足りず、袖ぐりの底の位置も合っていませんでした。シミュレーションの結果を見ながら引き直し、胸まわりのゆがみが消えるまで詰めたところ、肩の傾斜はかなり水平に近づいたそうです。

原型を共有して、4人で型紙を分担する

シャツ・ジャケット・パンツ・スカートの型紙は、同じ原型をもとに別々のメンバーが引いています。原型を共有したことで、分担してもサイズ感やバランスが大きく崩れなかったとしています。

  • シャツ:首が細いぶんネックラインのカーブがきつく、一枚襟ではシミュレーションで乱れたため二枚襟に変更。後ろのヨークのタックはダボつきの原因になるので削除
  • ジャケット:胸の大きさの影響でゴージラインが上に寄り、肩の傾斜が合わずに前開きがハの字に開いたため、シミュレーションで確かめながら補正。次の工程でメッシュを切りやすいよう、身頃のダーツは直線に
  • スカート:ギャザーに頼らず、原型から切り開いてフレア分を出す展開で、ウエストのもたつきを抑えつつ裾に向かってボリュームを出す
  • ショートパンツ:現役の教員が担当。シミュレーションの結果からミリ単位で縫製線を調整

CLOの型紙の形のまま2Dでリトポする

Blenderの工程では、CGのワークフローをアパレルの作り方に寄せ、その中心に2Dでのリトポロジーを置いています。型紙やダーツが増えるほど縫い目の頂点を揃えるのが難しくなり、これまで2Dでのリトポは避けられてきた、というのがスライドの問題提起です。縫い目の頂点を自動で揃える仕組みは、牛山氏が「AC9 Cloth Retopo」として公開しています。

AC9 Cloth Retopoのバナー。リトポ後のワイヤーフレームのジャケットと、仕上がったジャケットが左右に並ぶ
AC9 Cloth Retopoでリトポしたジャケット(画像:牛山氏のXより)

型紙の形がそのままUVになるので、柄を置いても継ぎ目が実物の縫い目と同じ位置に入ります。立体では塗りにくい脇の下や深いシワも、平面のまま作業できます。AC9 Cloth Retopoは無料のBlenderアドオン(Blender 5.0以降・GPL-3.0)で、CLOとMarvelous Designerのメッシュに対応し、日本語のUIとマニュアルが付いています。9月14日にv1.0.0、17日にv1.1.0が出ています。

このほか、分かれていたパーツのUVを1つのUV空間にまとめてテクセル密度を考えて配置し、マテリアル数とテクスチャセット数を減らすテクスチャアトラスも紹介しています。ポケットは、2D上でAOを見ながら身頃側をナイフで切り、ポケットと頂点の位置と数を揃えてつないでいます。つながないと、スキンウェイトで変形させたときにポケットが浮いたり下の布にめり込んだりするためです。

スカートを輪で揺らす、容量を84MBに収める

Unityの工程では、スカートの揺れを扱っています。PhysBoneを1つだけで揺らすとパネルがばらばらに動き、脚に貫通することが多かったため、ほかのアバターの構造を観察し、Rotation Constraintで隣のボーンの回転を参照させました。隣り合うパネルが連動し、スカートが輪として揺れるようになったとしています。

技術的な数字も載っています。衣装のポリゴン数は合計59,700で、内訳はジャケット27,652・シャツ7,895・パンツ5,816・スカート6,931・レッグウェア11,406です。マテリアルスロットは5、PhysBoneのコンポーネントは20。テクスチャは512pxから4Kまでを使い分けて、衣装データの容量を84MBに収めています。

VRChatで「そこにいる」映像を撮る

最後の工程は、VRChatでの映像撮影です。使用曲とウォーキングのテンポを合わせ、衣装を見せるだけでなく、アバターと衣装がVR空間に存在していると自然に感じられる映像を目指したとしています。撮影のコツとして、ルームランナーの活用、フレンドへの聞き込みやワールドを探すためのワールドを使ったロケ地探し、構図とフォーカスを詰めた撮影のためにカメラのプロに頼んだことを挙げています。

管理人のひとこと

アニメのキャラの服は設定画を見ながら3Dで直接起こすことが多く、型紙から作る話をここまで順を追って読んだのは初めてです。人間用の原型をそのまま使うとアバターには合わない、というところから原型を作り直していて、最初の工程で体型の違いに合わせているのが面白いですね。

型紙の形がそのままUVになるのは、柄物の服だと特に役に立ちそうです。チェックやストライプが縫い目でずれずに入るのは、UVを手で切っているとなかなか出せない絵です。うちは3ds Maxなので、AC9 Cloth Retopoは使えませんが、型紙に沿ってリトポする考え方は参考になります。

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