DNEGが、2026年7月24日公開の映画『Motor City』のVFXブレイクダウン映像を2026年8月11日に公開しました。1970年代のデトロイトを舞台にしたアクション作品で、DNEGは唯一のVFXパートナーとして参加しています。監督はPotsy Ponciroli、DNEG側のVFXスーパーバイザーはSerkan Zelzele、VFXプロデューサーはJane Reynoldsです。
DNEGが担当した範囲
DNEGは公式サイトで、インビジブルエフェクト、デジタル環境、FXシミュレーション、そして生々しい流血表現の増強を組み合わせてアクションを支えたと説明しています。単発のスペクタクルショットというより、作品全体に薄く広く効かせるタイプの仕事です。
公式が挙げている主な作業は、デジタルのデトロイト市街、CGによる顔の傷、テルミット反応による爆発と火花のシャワー、そしてアクションシーン全体にわたる煙のシミュレーションです。
現代のデトロイトを1970年代に戻す
ブレイクダウンで分かりやすいのが、街並みの置き換えです。実際に撮影された現代のデトロイトの夜景から高層ビル群のシルエットや現代的な看板を差し替え、時代に合った建物とネオンサインを乗せています。


単に古い建物を足すのではなく、画面に入ってくる光源そのものが変わっているのがポイントです。赤いネオンが手前のビルの屋上と壁面を照らし、道路の濡れた路面に反射する状態まで作り込まれています。
ブルースクリーンのステージから屋上へ
アクションの舞台になる屋上も、実際にはステージ内のブルースクリーンで撮影されています。素材の段階ではクラッシュマットと照明機材、ブームマイクが写り込んだ状態です。


完成カットでは、屋上の床面と縁、看板の鉄骨、そして眼下に広がる街路と電線までが作られています。俳優の足元だけが実写で、その周囲はほぼ全域がデジタル環境という構成です。
火花と煙を足して密度を上げる
実写でも火花と煙は焚かれていますが、完成カットではさらにシミュレーションを重ねて量と広がりを増しています。手前の車のボディや奥の車列に光が回り込む形で、画面全体が炎の色に染まっています。


ワイヤーを消して背景を差し替える
ワイヤーアクションのカットでは、ブルースクリーン前で吊られた状態の素材から、ワイヤーと背景を丸ごと処理しています。


エレベーター内の格闘シーンが最大の課題だった
DNEGが「主要なクリエイティブ上の課題」として挙げているのは、閉所であるエレベーター内の格闘シーンです。血のエフェクトを緻密にトラッキングし、演技と小道具を目立たない形で補強したうえで、CGの脚と血しぶきを作る必要がありました。
技術的に厄介だったのは、シーンの緊張感が段階的に上がっていく流れをコントロールしつつ、複数のアングルから撮影された複数のショット間で状態を一致させることだったとしています。血の量や傷の状態が、カットが変わるたびにずれてはいけない、という連続性の問題です。
ブレイクダウンの全編と参加スタッフのクレジットはDNEG公式サイトの『Motor City』ページで公開されています。
管理人のひとこと
普段はアニメ寄りの仕事なので実写VFXは畑違いなのですが、このブレイクダウンで一番見応えがあったのは街並みの置き換えでした。1970年代に戻すという指示に対して、建物を古くするだけでなく、ネオンの赤を画面全体の光源として使い直しているのが分かります。セルルックでも背景の色味とキャラに当たる光を揃える作業は常にあるので、光を「時代の記号」として設計している点は考え方として近いものを感じました。ブルースクリーンのステージが屋上まるごとに化けるカットも、素材と完成の落差が気持ちいいです。連続性の話も他人事ではなく、複数カットで血や傷の状態を揃えるというのは、アニメでいえば同じシーンの作画修正が全カットに波及するのと同じ性質の面倒さだと思いました。



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