BCON26講演|3Dアニメに手描き風のスメアを自動で入れるアドオン「SmearFX」の仕組み

Blender

9月23〜25日にアムステルダムで開かれたBlender Conference 2026(BCON26)から、Shu-Ting Lin氏のセッション「3D-to-2D Animation Smear Effect Technique Based on Japanese Hand-Drawn Style」の動画が、Blender公式YouTubeで2026年9月25日に公開されました。約39分です。

日本の手描きアニメで速い動きのコマに入る「スメア」を、3Dアニメーションから自動で作るという内容です。Lin氏は台湾のエンジニアで、SIGGRAPH Asia 2024で発表したポスター論文をもとに、自作のBlenderアドオン「SmearFX」の仕組みと使い方、仕上げまでの流れを実演しています。本人は、純粋に個人的な関心から始めたプロジェクトだと話しています。

日本のアニメで3Dが増えている理由から

研究のきっかけは、日本で開かれたSIGGRAPH Asia 2024で聞いたMAPPAの講演でした。『進撃の巨人』の制作で3Dをどう使ったかという内容で、Lin氏は要点を次のようにまとめています。日本のアニメは労働集約的で、大量のカットを多くのアニメーターに振り分けるため、設定があっても絵には人ごとの差が出ます。その差をそろえるための修正ややり取りが積み重なるところを、3Dにすれば自動的にそろえられ、制作コストを抑えられる。だから3Dを使う場面が増えていて、3Dを手描きらしく見せる研究には価値がある、という整理です。

スメアは「2D版のモーションブラー」

テレビアニメは24fpsで作られますが、絵が緻密になるほど24枚を描くのは負担になります。1枚を2コマ見せれば枚数は減るものの少しカクつき、3コマではカクつきが目立ちすぎる。そこで1コマ・2コマ・3コマ打ちを混ぜて、見た目を保ちながら枚数を減らします(講演ではこれを「タイミング」と呼んでいます)。

このとき、前後のコマで絵が大きく変わる箇所に、速さと勢いを出すために足されるのがスメアです。現実の速い物体にモーションブラーがかかるのと同じ役割なので、Lin氏は「2D版のモーションブラー」と説明しています。3Dを手描きに近づけるには欠かせない技法だ、というのが講演の出発点です。

SmearFXが目指したこと

アドオンの目標は3つです。

  • 形はすべてジオメトリノードで自動生成し、頂点を手で動かさなくて済むようにする
  • 前後のコマで大きく動く箇所でも、簡単な設定で動きの軌跡を自動で作れるようにする
  • 操作と流れを簡単にし、結果を制御しやすくする

現時点で用意されている形は、日本のアニメでよく見る2種類。講演では「スピードライン」と「ジグザグライン」と呼んでいます。

青いマネキンの3Dポーズ(左)と、そこから生成したスメア入りの線画4コマを上下2段で並べた図
3Dのポーズ(左)から生成したスメア入りの線画。t+1とt+2は同じ絵を2コマ見せている(画像:Shu-Ting Lin氏のサイトより)

デモ:コマ打ちの間の軌跡をサブフレームから拾う

デモでは、キャラクターが剣を振るアニメーションを使っています。キーフレームの補間は「一定」で、2コマ打ちのため、あるコマと次のコマで剣の位置が大きく飛びます。

アドオンのパネルで剣を対象に選び、スタイルを選んで作成すると、アンカーポイント、効果の範囲を決める空のボックス、生成されたジオメトリの3つが入ったコレクションができます。ボックスは剣の子にして位置と大きさを合わせます。

要になるのは次の手順です。キャラクターのアーマチュアを複製して「サブフレーム参照」用とし、その補間だけを「リニア」に変えて、アンカーポイントをこちらの子にします。こうするとアンカーポイントはコマとコマの間(サブフレーム)でも動くので、軌跡をベイクするボタンを押すと、アドオンがサブフレームごとに位置をサンプリングし、ジオメトリノードに渡して軌跡と形を作ります。本番のアーマチュアは一定補間のまま、同じ動きを線形でなぞる複製からコマの間の動きを取り出すわけです。アンカーポイントの親はアーマチュアでなくてもよく、補間がリニアならカメラなど他のオブジェクトでも構いません。

調整はモディファイアのプロパティで行い、項目は「散らばり」「スタイル」「その他」の3つにまとめられています。デモで触っていたのは、形の数(密度と比率)、長さ、円錐の開き具合と開く範囲、解像度、長さのばらつき(ノイズ)、オフセット、指定したベクトルとの内積で不要な頂点を減らす設定など。ノードを直接編集することもでき、軌跡はパネルからプレビューできます。あとはモディファイアの値にキーを打っていけば、アドオン側の仕事は終わりです。

逆行列でボックスの中の点だけを残す

Lin氏が特に紹介したかったと話すのが、効果を出す範囲の絞り込みです。Object Infoノードで空のボックスの変換行列を取り、Invert Matrixノードで逆行列を求めます。剣の上でサンプリングした点にこの逆行列を掛けると、ボックスをどう動かし、回し、拡大縮小していても、点はボックスごと原点の単位ボックスの中に移されます。ボックスの内側にあった点は内側のまま、外側の点は外側のままです。

あとは各点のX・Y・Zの絶対値がすべて1未満かを調べるだけで、ボックス内の点かどうかが判定できます。こうした線形代数をジオメトリノードの中でそのまま組めることに驚いた、とLin氏は話しています。

仕上げ:輪郭抽出とFreestyleを深度で合成

後半は、Lin氏自身の仕上げの流れの紹介です。レンダープロパティで透過とFreestyleを有効にし、ビューレイヤーのパスで深度・ディフューズカラー・Freestyleを出します。ビューレイヤーは輪郭用、Freestyle用、ディフューズ用の3つに分け、Freestyle用ではアドオンが作ったコレクションをレンダーから外します。

コンポジットでは、エッジ検出のフィルターノードで輪郭の画像を作ります。しきい値を上げるとノイズが消え、きれいな線になります。次にFreestyleの線画と輪郭の画像を、両方のレンダーレイヤーの深度パスを使った深度テストで合成し、そこにディフューズカラーの画像を乗算します。最後の彩色だけはBlenderの外で、Affinityを使って仕上げていました。

今後は、日本のアニメでよく見るスタイルを増やすことと、彩色までBlenderの中で完結させるツールの開発を考えているそうです。講演のスライドとデモ動画は、Lin氏のサイトからダウンロードできます。アドオンの配布リンクは講演中のスライドにQRコードで示されていて、会期の週末までは割引コードで無料で入手できると案内されていました。

管理人のひとこと

セルルックのアクションで速いコマを見せるとき、スメアが入るかどうかで印象がかなり変わります。モデルを直接いじって形を作るとカットごとの作業になるので、範囲を箱で指定するだけで形が出てくるのは助かりそうです。

面白かったのは、コマ打ちのままの本番のアーマチュアとは別に、補間をリニアにした複製を用意して、コマの間の軌跡を拾うところです。2コマ・3コマ打ちの間で実際にどこを通っているかを別の骨に任せているので、本番のリグには手を入れずに済みます。

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