Blender 5.3で、CyclesのPrincipled BSDFに分散(Dispersion)が追加されます。光が波長ごとに違う角度で屈折し、ガラスや宝石で虹色に分かれる現象を、Transmissionパネルに加わる2つの値で表現できるようになります。Blender 5.3は現在アルファ版で、開発スケジュールでは9月30日にベータへ移り、11月に正式リリースの予定です。
Transmissionに加わる2つの値
Blender 5.3のリリースノート(Cycles)には、分散がTransmissionパネルに追加されたと記載されています。開発版のマニュアルによると、追加されるのは次の2つで、どちらもCycles専用です。
- Dispersion Scale: 分散の量を線形にスケールする値。光が虹色に分かれる度合い
- Dispersion Abbe Number: 素材のアッベ数(Abbe数)
アッベ数は、光学ガラスなどで使われる色分散(波長による屈折率の違い)の指標で、ドイツの物理学者エルンスト・アッベにちなんだ名前です。光学ガラスメーカーの技術資料でも、分散の性質を表す値として屈折率と並べて使われています。一般的には、黄色のd線(587.56nm)での屈折率から1を引いた値を、青のF線(486.1nm)と赤のC線(656.3nm)での屈折率の差で割って求めます。
青と赤の屈折率の差が大きい素材ほど分母が大きくなり、アッベ数は小さくなります。つまり、アッベ数が小さいほど光が虹色に分かれやすい素材です。実際の値は、HOYAの資料が正常分散ガラスの基準に挙げているクラウンガラスC7で60.49、フリントガラスF2で36.30。同社が硝種コードの例に出している低分散のフルオロクラウンFCD1は81.61で、硝種によって幅があります。
分散の量はおおよそDispersion ScaleをDispersion Abbe Numberで割った値に比例し、アッベ数が低く、屈折率が高いほど分散が強くなる、とマニュアルは説明しています。

分散は可視光の波長をランダムにサンプリングして計算するため、色のノイズを減らすにはサンプル数を増やし、Indirect Light Clampingの値を高めにする必要がある、という注意書きも添えられています。
OpenPBRに合わせた実装
実装はWeizhen Huang氏によるプルリクエスト#162041で、2026年8月18日にマージされました。2つのパラメータはOpenPBR v1.1.1に対応しています。
開発者の説明では、分散する素材に当たった時点でパスごとに1つの波長をサンプリングし、その波長を使ってパスの明るさの掛け算と、素材の屈折率の決定を行います。波長の選び方は、輝度に比例させる方法だと収束する前に緑がかって見えるため、輝度に定数を足して曲線に当てはめた重点サンプリングを採用したとしています。

なお、oneAPIのコンパイラの不具合のため、oneAPIでMNEE(シャドウコースティクス)を使う場合は、分散が一時的に無効になっています。
解説動画
Christopher 3D氏が2026年9月3日に、分散の基本と5.3で期待できることを解説する約12分の動画を公開しています。
価格・入手先
| 価格 | 無料 |
| 対応バージョン | Blender 5.3(アルファ版・Cyclesのみ) |
| ライセンス | GPL |
| 入手先 | Blender デイリービルド |
5.3はアルファ版の開発中ビルドとして、デイリービルドのページから入手できます。
管理人のひとこと
普段のセルルックの仕事では、Cyclesで透明な素材を物理的に作り込む場面が少なく、アニメの現場ですぐに出番がある機能ではなさそうです。ただ、宝石やガラス細工の小物をイメージボード用にきれいに見せたいときに、ノードを組まず2つの値で済むのは手軽です。
アッベ数は実在のガラスや宝石ごとに値が決まっている物性値なので、表を見ながら入れていけばそれらしくなりそうです。色のノイズを消すのにどのくらいサンプルが要るのか、実際のシーンでの重さは試してみたいですね。



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