SideFXが、プロシージャル3DCGソフトウェア「Houdini」のメジャーアップデートとなるHoudini 22を2026年7月15日にリリースしました。ゴールドリリースはビルド22.0.368です。今回の最大の目玉は、ガウシアンスプラット(GSplats)のネイティブ対応。実写ロケーションのスキャンデータを、従来のフォトグラメトリのようなリトポロジー・UV展開・テクスチャベイクを一切通さずに扱えるようになりました。あわせてUIの全面刷新、Quad Remeshやサブディビジョン表示といったモデリング周りの更新も入っています。
リトポもUV展開も不要──ガウシアンスプラットがネイティブ対応
ガウシアンスプラットは、3Dシーンをポリゴンメッシュではなく、位置・形状・色・不透明度を持つ何百万個もの半透明な楕円体の「粒」として表現する技術です。Houdini 22では、この作成・編集・リライト・リギング・アニメーション・レンダリングまでを、サードパーティ製ツールに頼らずHoudini内で完結できるようになりました。
SideFXが挙げているメリットのうち、背景・アセット制作の視点で効いてくるのは次の点です。GPU上で直接ラスタライズされるため60fps以上のリアルタイム描画が可能で、従来のフォトグラメトリで何時間もかかっていたリトポロジー・UV展開・テクスチャベイクの後処理を丸ごと省略できます。さらに、髪・毛・植生・濡れた表面といった「モデリングで最も手間のかかる対象」が、特別な処理なしに自然にキャプチャされるとされています。実ロケーションをスキャンしてHoudiniやUnreal Engineへ背景・ライティングリファレンスとして持ち込むバーチャルプロダクション用途も想定されています。
取り込みだけでなく、Karmaでレンダリングしたシーンから直接ガウシアンスプラットを生成する経路も用意されました。カメラアレイで複数の既知視点をキャプチャする方式のため外部のカメラ推定が不要で、位置や法線といったシーンの属性を保持したまま軽量なアセット化ができます。セットドレッシング用のプロキシやリアルタイム確認用の軽量版として使う、という使い道が示されています。

22の主な新機能
- ガウシアンスプラットのネイティブ対応: 作成・編集・リライト・リギング・アニメーション・レンダリングをHoudini内で完結。PDG/TOPsによる学習の並列処理、周辺アーティファクトのプロシージャルなクリーンアップ、Copernicusでのラスタライズ(カラー+深度の2D出力)に対応します。
- UIの全面刷新: 色を調整できるテーマエディタ(プリセットの再利用・グローバルコントラストスライダー付き)、検索可能になった環境設定、図解付きのツールチップ、刷新されたカラーピッカーとランプカタログ。
- Quad Remesh: クワッドフローの改善、ハードエッジ検出、CADトポロジーやシンメトリーへの対応が強化され、元形状によく追従したクリーンなメッシュが得られます。
- サブディビジョン表示の改善: リミットサーフェスのインタラクティブ編集、ケージとサーフェスの同時表示、リアルタイムのフィードバックに対応。
- Walk on Surface / Curve Animate / Morph: メッシュ上を方向・アトリビュート・ベクトルフィールドに沿って点やカーブを移動させるツール、位置・接線・トポロジー変化を滑らかに補間するカーブアニメーション、自己交差せずにプロファイルをモーフさせる機能が追加されました。
- Copernicusの成熟: 新しいグランジマップやベイクツールがプロダクション対応に。地形と海洋もCopernicusへ移行し、テクスチャベースのシミュレーションとゲーム向けのアニメーションマップ出力が可能になりました。
- キャラクター・CFX: KineFXまわりのプロシージャルなリグ/アニメーションワークフローが拡充され、マッスル・ティシュー・群衆・ヘア&ファーのイテレーションも高速化されています。
- 内部アーキテクチャの刷新: 新しい数学ライブラリ(性能と数値安定性の向上)、プラットフォームごとの新メモリアロケータ(性能向上とメモリ消費削減)、Linux ARM版のプレビュー提供。
モデリング周りの更新
モデリングは今回「小規模だが実作業に効く」更新が中心です。Quad Remeshはクワッドフロー、ハードエッジ検出、CADトポロジー、シンメトリー、オーガニックなエッジフローがそれぞれ改善され、元のモデル形状により近いクリーンなメッシュを生成できるようになりました。スキャンデータやCADデータを制作用メッシュへ落とし込む場面で効いてくる部分です。
サブディビジョン表示はリミットサーフェスをインタラクティブに編集でき、ケージとサーフェスを同時に見ながらリアルタイムに結果を確認できるようになりました。ほかに、メッシュ上を方向・アトリビュート・ベクトルフィールドに沿って点やカーブを移動させるWalk on Surface、SideFX LabsのSplit by Expression(ジオメトリ分割をメソッド別のUIで扱え、VEX式が露出しているためVEXの学習素材としても使える)が追加されています。

UIの刷新
今回のリリースでは、Houdiniの見た目と操作感にも手が入りました。新しいテーマエディタでは色を自由に調整でき、プリセットとして使い回せるほか、グローバルなコントラストスライダーも用意されています。環境設定はレイアウトと整理が見直され、設定を検索できるようになりました。ツールチップには図解が加わり、そこから詳細ヘルプへ飛べます。カラーピッカーとランプカタログも刷新され、パレットの共有やランプのビジュアルブラウズに対応しています。

価格・入手先
| Houdini Apprentice | 無料(非商用・学習用) |
| Houdini Indie | $299 USD/1年(約¥45,000)、$449 USD/2年。年間総収入10万USD未満などの条件あり |
| Houdini Core | 永続ノードロック $1,995 USD / 年間ライセンス $1,475 USD |
| Houdini FX | 永続ノードロック $4,495 USD / 年間ライセンス $3,505 USD |
| 対応OS | Windows / macOS / Linux(Linux ARMはプレビュー) |
| 入手先 | SideFX公式ストア |
※価格は2026年7月21日時点でSideFX公式の比較表に掲載されている通常価格です。日本円は為替により変動するため参考値です。
新機能の詳細はSideFX公式のWhat’s New in H22をご覧ください。
管理人のひとこと
正直に書くと、自分の普段の仕事はMax/Blender中心でHoudiniは常用していません。それでも今回のGSplats対応は素通りできないと思って取り上げました。フォトグラメトリで一番しんどいのは撮影ではなく、そのあとのリトポとUVと焼き込みの作業です。そこを丸ごと飛ばして、しかも髪や植生のような苦手対象がそのまま撮れる、という話であれば、背景のリファレンス作りやプロキシ用途で相当に化ける可能性があります。
もうひとつ気になったのが、Karmaのレンダリング結果からGSplatsを生成できる方向です。外部のカメラ推定を挟まないので、既にCGで作ったシーンを軽量なリアルタイム確認用に落とす、という使い方ができそう。セルルックの案件でそのまま使えるかは別問題ですが、レイアウトやセットドレッシングの検討段階で軽く回せる版を作れるのは実務的にありがたいはずです。
モデリング側はQuad Remeshとサブディビジョン表示の改善が中心で、派手さはないものの地に足のついた更新という印象。UIの検索可能な環境設定は、正直あらゆるDCCツールに欲しい機能です。



コメント