オープンソースの3DCGソフトウェア「Blender」の最新LTS(長期サポート)バージョンであるBlender 5.2 LTSが、2026年7月14日にリリースされました。LTS版のため、2028年7月までバグ修正などのサポートが継続されます。本アップデートの目玉は、素材の入手からライブラリ運用までをBlender内で完結させる「オンラインアセットライブラリ」の大幅強化です。あわせて、クロス・ヘアシミュレーションのノードベース刷新や、Loop Toolsの標準搭載などモデラーに直結する更新も入っています。
アセット探しがBlender内で完結
標準の「Essentials」アセットライブラリに、パラメトリックマテリアル・コンポジットエフェクト・HDR背景・ジオメトリノードセットアップなど多数のアセットが追加されました。これらは本体に同梱されるのではなくオンラインでホストされ、必要になったときにBlender内から直接ダウンロードする方式です。素材が増え続けてもインストールサイズは変わりません。ブラウザで素材サイトを巡回してダウンロード→整理→読み込み、という手間がBlenderの中だけで完結するのは大きな変化です。
さらに、環境設定に新設された「Asset Libraries」タブから、自作のオンラインアセットライブラリをホストしたり、好きなクリエイターが配信するライブラリを登録したりできるようになりました。数千規模のアセットも高速にブラウズでき、更新はワンクリックで反映されます。個人の素材集の運用はもちろん、チーム・スタジオ単位で共有ライブラリを配る用途にも使えます。アセットごとのインポート方式の指定にも対応しました。
クロス・ヘアがノード物理に
リリース前からコミュニティで話題になっていたのが、ノードベースに刷新されたクロス・ヘアシミュレーションです。根幹の「XPBD Solver」ノードは布・髪・パーティクルを統一的に扱うマルチフィジクスソルバーで、現時点では実験的機能(セルフコリジョン・風などは未対応)ながら、モディファイア感覚であらゆるメッシュに適用できます。
- クロスシミュレーション: ノードベースのモディファイアとして任意のメッシュに布の挙動を適用。ピン留め・破れ・伸縮性・曲がり具合のビルトインコントロール付き。
- ヘアシミュレーション: 表面オブジェクトに髪の挙動をアタッチし、「Empty hair」オペレーターで設定を自動化。
- エフェクターとカスタマイズ: Collider・Apply Gravityなどのビルトインエフェクター、閉じたメッシュを衝突オブジェクト化するColliderモディファイア、タグベースのフィルタリングを搭載。ノードグループを編集すれば独自のシミュレーション構築も可能。
- オーディオリアクティブ: 「Sample Sound Frequencies」ノードと「Sound」ソケットで、音声ファイルの周波数データをジオメトリノードに直接読み込み、音に反応するアニメーションを作成可能。

その他の注目機能
Cyclesには「テクスチャキャッシュ」が搭載され、大量のイメージテクスチャを使うシーンで最適化されたテクスチャファイルを自動生成し、レンダリングに必要なタイル・解像度だけを読み込むことでメモリ使用量と起動時間を大幅に削減できるようになりました。テクスチャの多い背景シーンでVRAM不足に悩んでいる方には目玉級の改善です。
- Loop Toolsの主要機能が標準搭載に: 定番アドオン「Loop Tools」のTo Circle・Space Edge Loops Evenly・Flattenの3つが、C++で一から書き直されたネイティブのオペレーターになりました。高速化に加えて、従来のコーナーケースの不具合も修正されています。アドオンを別途有効化する必要がなくなり、リトポや円形の穴あけ作業がそのまま素の環境で回せます。
- Principled BSDFに「Thin Wall」モード: 紙・葉・薄いプラスチックなど、厚みのないメッシュを物理的に正確に扱う新モードです。板ポリで作った背景の小物やカーテン・植栽の透過表現が、これまでより正しくレンダリングされます。
- グリースペンシルの新しいFillツール: 新しいドロネー分割ベースの塗りつぶしアルゴリズムが搭載され、境界ストロークから正確なジオメトリを生成します。線の隙間の自動検出・反転塗り・ズームに依存しない結果・大幅な高速化が特徴で、Blender Studioのアーティスト陣とDaniel Martínez Lara氏による19種の新ブラシもオンラインアセットとして追加されています。
詳しくはblender.orgをご覧ください。
管理人のひとこと
白状すると、この記事は完全に出遅れました。リリースが7月14日なので、もう1週間近く前の話です。ただその間に実際に触った人の作例やチュートリアルが出そろってきたので、末尾に厳選して載せています。
実務で一番効きそうなのは、やはりオンラインアセットです。HDRやマテリアルを探しにブラウザへ出なくてよくなるだけでも日々の時短になりますし、自作ライブラリのホストに対応したことで、チームで素材を配る仕組みとしても化けるかもしれません。モデラーとしてはLoop Toolsの標準搭載も地味に嬉しいポイント。話題のクロス・ヘアのノード物理は、セルフコリジョンや風が未対応の実験的機能なので、いきなり本番の衣装ではなく小物まわりから試すのが良さそうです。テクスチャキャッシュも、背景シーンでVRAMに殴られた経験がある身としては相当ありがたい改善です。
関連動画・投稿
Blender公式がベータ時点で「まず試すべき機能」として挙げた投稿。テクスチャキャッシュ・クロス/ヘア・オンラインアセットという並びからも、今回の力点が分かります。
オンラインアセットライブラリを実際に開いて中身を見て回るツアーとしては、Farrukh 3D氏の動画が分かりやすいです。どんなマテリアルやセットアップが並んでいるのか、導入前の雰囲気掴みにどうぞ。
話題のクロスシミュレーションの実例として最も拡散されていたのが、Cartesian Caramel氏の実験動画です。ノードベースならではの破れ表現が分かりやすく出ています。作り方は同氏自身の解説動画で追えます。



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